スーパーガール
「大丈夫か、末次さん」


畑山くんが心配そうに声をかけてくる。


私は返事ができない。

何という怪力。

我ながら怖くなる。

それに……


「す、末次さん……!」


棚橋さんが私の前に立ち、両肩を掴んだ。

左手の力が強い。これならもう、リハビリは必要ないよね。

ああ、ほんとうに、泣きそう……


「きみは、なんてことを……僕のために……」


棚橋さんは怒っていた。こんな怖い顔、見たことがない。

私を怒ってるんだ。


「ごっ、ごめんなさい……私、わた……しっ……」


棚橋さんの手を振りきり、逃げ出した。

いたたまれず、恥ずかしすぎて、どうしようもなくて。


「末次さん!」


マンションを出てしばらくの間、背後から呼び声がしたけれど、やがてそれも振りきる。


(もうダメだ。嫌われた)


逃げる私の頭には、その絶望的なフレーズだけが、ぐるぐると渦巻いていた。
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