スーパーガール
しばらくじっとしていると、着信音が鳴った。

ビクッと震え、恐る恐る画面を確かめる。棚橋さんからだ。その姿勢のまま鳴りやむのを待つが、なかなか止まらない。


「わかりました……覚悟を決めます」


スマートフォンを構え直し、タップしようとした。


「末次さん!」

「はい、無視してすみません。末次で……」


あれっ、と思う。まだ、画面をタップしていませんが?

と、次の瞬間、テーブルの向こうに、いきなり誰かが座った。


「ひゃあっ!」


素っ頓狂な声を上げて、後ろにのけぞる。

信じられない。こんなこと、予想もしなかった。彼はスマートフォンをテーブルに置き、呼吸を整えている。


「きみは……足が、速いですね。スーパーに入ってからは見失って、あちこち探して……ようやく、追いつきました」


汗だくの棚橋さんが、呆気に取られる私を見て、にこりと笑った。

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