スーパーガール
「怖くて動けないでいる彼の代わりに、女の子がひったくりを追いかけて、捕まえて、財布を取り戻してくれたことも……」

「えええええっ!?」


あまりの大声に、私自身が驚く。だって、こんなこと、あるだろうか。


「あ、あの畑山さんが、学くんなんですか? 五年生の時、私が振られた……」

「振られたと思ったのですか?」


私が大声を出したので、周囲の客が引き気味にこちらを見ている。だけど棚橋さんは落ち着き払って、私に集中している。


「だ、だって、学くんは私を置いて、逃げるように帰ってしまいました。その後も、何も言わずに引っ越してしまって、二度と連絡もなかったんですよ?」

「彼は、きみに合わせる顔がなかったと、言っていました」

「えっ、どうして」


私は、棚橋さんではなく学くんに質問している。小学五年生の、あの日の学くんに。


「乱暴な私を、嫌いになったのでは?」

「逆ですよ」


棚橋さんは、きっぱりと言う。
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