スーパーガール
「彼は怖くて、ひったくり犯を追いかけられなかった。それなのに、きみは勇敢にも犯人をやっつけ、財布を取り返してくれた。彼は男として、きみに対して恥ずかしくて、あの場にいられなかったと述懐しています。その反省を踏まえ、転校先の小学校ではスポーツクラブに入り、中学高校は格闘技の部活動を頑張り、ジムに通い、今の頑健な体を得るに至ったそうです」
「そ……そんな、ことって……」
十年近く私を苛んできたトラウマが、一気にひっくり返る。
私は、学くんのことがあったから、好きな人に自分をさらけ出すのが怖くて、一歩を踏み出せずにいたのに。
「だけど、どうして畑山くんは、私に言ってくれなかったんですか。自分が、渡辺学だって」
「ええ。僕も不思議に思って、彼に訊いてみました。そうしたら、再会したきみがまったく彼だと気付かないので、あえて嫌な思い出を蒸し返すことはないと、考えたそうです」
「はああ?」
「遊園地での思い出は、彼にとってもトラウマだったんですね」
何てことだ。思わぬところで、あの日の真実が語られた。しかも、棚橋さんの口から。
どっと疲れが押し寄せ、崩れそうになる。だけど私には、向き合うべきことがあった。
「そ……そんな、ことって……」
十年近く私を苛んできたトラウマが、一気にひっくり返る。
私は、学くんのことがあったから、好きな人に自分をさらけ出すのが怖くて、一歩を踏み出せずにいたのに。
「だけど、どうして畑山くんは、私に言ってくれなかったんですか。自分が、渡辺学だって」
「ええ。僕も不思議に思って、彼に訊いてみました。そうしたら、再会したきみがまったく彼だと気付かないので、あえて嫌な思い出を蒸し返すことはないと、考えたそうです」
「はああ?」
「遊園地での思い出は、彼にとってもトラウマだったんですね」
何てことだ。思わぬところで、あの日の真実が語られた。しかも、棚橋さんの口から。
どっと疲れが押し寄せ、崩れそうになる。だけど私には、向き合うべきことがあった。