スーパーガール
棚橋さんは続けた。


「畑山くんは、思い出話をした上で推論を述べました。もしかしたら末次さんは、誤解したのかもしれないと。俺に嫌われたと、彼女のほうこそトラウマになったのではないかと」


私は黙って、頷いた。まさに、そのとおりである。


「彼の話を聞いて、ようやくいろんなことがクリアになった。きみが万引犯を捕まえなかったのは、僕に嫌われたくなかったからですね? あの日の、学くんのように」

「棚橋さん……っ」


骨折したばかりの、痛々しい姿を思い出す。トラウマなんかのせいで、この人が痛い目に遭った。申しわけなくて、声が震えた。


「そうです。だって私は、棚橋さんが好きなんです。本当の自分をさらせば、どこかに行ってしまいそうな気がして、怖かった……」

「末次さん、泣かないでください。きみのような子に泣かれると、僕はどうすればいいのか、わからなくなる」


彼はテーブル越しに、私の手をぎゅっと握る。力強い、男の人の手のひらだ。
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