スーパーガール
夕飯のメニューはお鍋に決めた。

棚橋さんのアパートに帰ると、早速料理にとりかかる。


「きみは料理上手ですねえ。いつも感心します」


材料を切る私の手もとを、彼はまじまじと見ている。


「いえ、そんなこと。お鍋は野菜を切るだけだし……確かに料理は好きだけど、食い意地が張ってるだけですよ」

「だとしても、僕は幸せです。きみの料理を、この先ずっと食べることができるのですから」

「……」


どう返せばいいのかわからず、私は口ごもる。


「前から思ってたけど、棚橋さんって天然ですよね」

「天然? どこがでしょう」

「こちらが赤面するようなことを、さらりと言えちゃうところとか」


棚橋さんは、ぴんとこないようだ。だからこそ、天然なんだけど……


「よくわかりませんが、素直ってことにしておきましょうか」

「あは、ポジティブですね」


私達は微笑み合う。

こんなひと時が嬉しい。何気ない日常のやり取りが、心をほっこりとさせてくれる。
< 79 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop