スーパーガール
「さあ、用意ができましたよ」

「僕が持ちます」


棚橋さんが、熱々のスープが入った土鍋を、テーブルの卓上コンロに運ぶ。

私は小皿を用意しながら、彼の左手をそれとなく見やった。リハビリの甲斐あって、日常動作を普通にこなせている。


「良かった……」

「え、何がですか?」


きょとんとする彼に、首を横に振る。彼はもう、手首を意識していない。


「お腹が空いちゃった。たくさん食べましょう」

「ああ、いただきます」


一人鍋も好きだけど、棚橋さんと囲む鍋は、また違った美味しさがある。モリモリ食べる私を、彼はにこにこ顔で見ていた。



「ごちそうさま。おいしかったよ、奈緒さん」

「あ、ありがとうございます」


棚橋さんは最近、私のことを下の名前で呼ぶようになった。私も瑞穂さんと呼ぶよう言われるのだが、なかなか難しい。何だか、照れてしまうのだ。
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