ハイリスク・ハイリターン
「朔(さく)。あんた、それ、本気で言ってんの?」
カチャン、と。
マグカップを少しだけ荒くテーブルに置きながら、友人である遥香(はるか)は言った。
ランチタイムの騒がしい店の奥。
ふたりで座ったテーブル席は、隙間風で寒くて。
からだも、こころも。
寒くてたまらない。
「…………本気、だよ」
そう呟いた私の顔を、頬杖をついたままじいっと見つめてくる。
その視線にすべてを見透かされそうで、怖くて。思わず視線を下げてしまった。
「嘘ばっかり」
溜息混じりの遥香の声には、呆れが含まれているようだった。
「あのねぇ。あんたがそんな器用なことできるわけ――」
「でも、だって、忘れるしかない」
遥香の言葉を遮るように発したそれは、少しだけ語尾が強くなってしまって。
ハッと顔を上げると、遥香は先程とは打って変わって心配そうな顔をしていた。