ハイリスク・ハイリターン
たくさん考えた。本当に、たくさん。
でも答えなんて見つからなくて。
「なかったことにするの?」
「……うん」
「本当に、忘れるの?」
「……うん」
誰も傷つかない、正しい答えを必死で探した。
でもそんな綺麗で優しい正解なんて、あるはずがなくて。
だったら。
「昨日のことは、忘れる。なかったことにする。でも、」
傷つくのも、泣くのも。
全部、私でいい。私だけでいい。
「でも、気持ちは、」
途端に頭を巡るのは、彼のこと。
大きな手、薄い唇、切れ長な瞳。
笑顔、横顔、背中。
私の名を呼ぶ声。