ハイリスク・ハイリターン
「気持ちは、消せない、かな」
視界が揺れる。
それが溢れないように目の奥にぐっと力を入れた。
言葉を詰まらせながら言う私を、遥香はどう思ったんだろう。瞳にどう映ったんだろう。
俯いてしまった私にはわからなかったけど。
――彼と。
出会ってから今日までが、走馬灯のように脳裏に過ぎる。
ひとつひとつ、大切な出来事を思い出す。
それらはシャボン玉のように弾けて消えるけれど、また新しいシャボン玉を作る。そして消える。
「あのね、朔」
それを何度か繰り返して、昨日の出来事までたどり着いたとき。
「あたしはいつだって朔の味方だからね」
頭上に降ってきた遥香の優しい声と表情に、情けなく心が震えて。
「ありがとう」と小さな声を返すのが精一杯だった。