ハイリスク・ハイリターン



「――――…透真(とうま)」



頭を下げ続ける彼――透真に、頭を上げてと優しく丁寧に声をかければ。

ゆっくりと見えなくなる旋毛(つむじ)。
そうして合う、視線。


目の前の透真は思ったとおり酷い顔をしていた。

緊張して強張っているような。
それでいて垂れた眉に、揺れる瞳。



そんな彼に、私はにこりと笑ってみせた。



「私も結構飲んでたし、大丈夫。気にしてないよ」



大人になるにつれ、嘘が上手になった。
自分を隠すのが当たり前になった。



「………朔」

「いやあ、酔った勢いってやっぱ怖いねぇ」



誤魔化すのも、冗談も。
子どもだったあの頃より容易(たやす)くなった。

そんなことばかり、できるようになった。


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