彼氏以上、オット未満
6月、都内の一軒家レストランは、ピンクやイエローの花に彩られ、華やかに着飾った人たちが続々と集まっていた。


「恵、ひさしぶり」


声に振り向くと、懐かしい人が立っていた。


「ほんと久しぶりだね、同じ会社なのになかなか会えないし」


「最近、出張ばっかなんだ。


恵は元気そうだな、浦野も元気か?」


「うん、おかげさまで」


「詩織ちゃんには先越されると思ってたけど、下手したら俺にも先越されるぞ」


「え、どういう意味?」


「俺、10月に式挙げるんだ」


「そ、そうなんだ、おめでとう」


「相手が誰か、聞かないのか」


「私も知ってる人?」


「恵が俺の実家に来た時、母さんが言ってた人」


「あ、縁談の人」


「今時、見合いってどうかとも思ったけど、まあ身元が保証されてると思えばな」


「良かったね」


正直、動揺していたけど。


「浦野のことだから、さっさと結婚するのかと思ってたけどな」


「昴のせいじゃないよ」


その時、彼氏の昴が戻ってきた。


「メグ、シャンパンでええ?


あれ、須川さんやないですか、ごぶさたしてます」


「浦野、久しぶりだな。


いま恵に、先越されるぞって話してたとこ。


じゃ、またあとでな」


私の元カレ・須川裕和は、颯爽と会場奥へ歩いていった。


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