彼氏以上、オット未満
「メグ!」


昴の声を背中で聞きながら、必死に走った。


「恵、乗れ!」


声の方角を見ると、タクシーの前で裕和が手招きしていた。


タクシーにすべりこみ、あとから裕和が乗り、無理やりドアを閉めた。


「お客さん、どうします?」


運転手さんの困った声に、


「出してください、とりあえず品川まで」


裕和は冷静に告げた。


ドアの窓をたたく昴を振り切り、タクシーは走り出した。


ドラマみたいだな、なんて変な余裕があった。


「見てたぞ、お前らの痴話喧嘩」


「えっ?」


「俺の部屋貸してやるから、浦野とちゃんと話せ」


タイミングよく、昴から電話がかかってきた。


『メグ、誤解や!


頼むから、俺の言い訳聞いてくれや』


どうしよう。


素直に昴を信じていいのか迷いがあって、私は返事をためらった。


「恵、電話貸して」


裕和に言われて、スマホを渡した。


「浦野、恵を説得しとくから、とりあえず品川駅まで来いよ。


そこからの道順は追って連絡するから」


それだけ言うと、電話を切ってしまった。


「え、裕和って、品川に住んでるの?」


「ああ、先月引っ越したばっか」


「もしかして、彼女いるんじゃないの?」


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