番外編『目が覚めたら、昨日より愛しいキスをして』
指に引っかかることのない、柔らかい髪が心地いい。
なんだか今、付き合ってるって感じがすごくする。
「熱くない?」
「ん、大丈夫。
だれかに髪乾かしてもらうなんて初めてだな」
ドライヤーの向こうから聞こえてきた明希ちゃんの声に、ふと心の中のささくれがめくれたような気がした。
「……でも、広告で女の人が触ってた」
手の動きはそのままに、ぽつりと、声がもれる。
シャンプーの広告で、明希ちゃんの髪を綺麗な女の人が触っている。
街中でその広告を見かけるたび、ダメだとは思いつつもつい目をそらしてしまう。