番外編『目が覚めたら、昨日より愛しいキスをして』


髪が乾いてきて、私はドライヤーを止めた。


「明希ちゃんのまわり、綺麗な人ばかりだよね」


しんとした部屋に、私の声が痛く響いた。


仕事だから仕方ない。

そんなこと十分すぎるくらい分かっているはずなのに、煌びやかな世界で活躍する彼が、たまにすごく遠くに感じてしまって。

あまりに住む世界が違うから、このポジションだって、あっという間に取って代わられてしまうかもしれない。


ついに限界点を超えてこぼれてしまった、行き場のなかったモヤモヤした感情に囚われていると、ずっと黙っていた明希ちゃんがこちらを振り返り、私を仰ぎ見た。


「それは、妬かれてるって自惚れていいの?」


「え、それ、は」


その時、突然腕を引かれた。

咄嗟のことに反応できず、そのままふたりでどさりとカーペットの上に転がる。

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