眠らぬ姫に不正解な祝福を。
私の涙をペロリと舐めたイスターは優しく頬を撫でてくれた。
その撫でてくれる手を取り、イスターの手を今度は私が撫でた。
「でも一つ正解なこともありました」
「なに?」
「追い返しの魔法を俺が使っているっていうことです」
日々聞こえてくるどこの誰かも分からない男性の声は、どうやらイスターの魔法によってということは合っていたようだ。
でも、どうしてまたそんな魔法をかける必要があるのだろう。
こんな私を求める人なんか、いないはずなのに。
「王座を狙う輩はいくらでもいるんですよ。そんな権威しか脳にない奴らに、俺の宝物を渡すわけがないでしょう?」
「そっか……一応は私王族だものね」
「しかも呪いがかかっていないのに、おとぎ話のようにキスをして目を覚ましてやろうなんて下衆な考えを持っている奴らがいたらたまったもんじゃない」
確かに想像したら鳥肌ものだ。
見知らぬ男に勝手にキスされて呪いが解けましたなんてこと、こちらから願い下げだ。
「でも、一応ここの塔には魔法はかけてあるんです。マイラ様が20歳になるまで出れない魔法が」
意外な事実に驚きを隠せずにイスターを見ると、ふっと小さくイスターは笑った。
「20歳になったら、あなたの王族としての地位はなくなるそうです。それまで、誰かに取られることもなく、俺が守っていたかったんです。死ぬなんて言わないと、窮屈なこの空間が嫌になって飛び出していってしまうんじゃないかと思って、少しだけ話を変えていました」
「地位か……」
「ええ。マイラ様は晴れて自由の身となるんです。この狭い空間から解放ですよ」
嬉しそうにいうイスターだけど、私は思わず自分から抱きついて顔を擦り付けた。