眠らぬ姫に不正解な祝福を。
そっと窓際の椅子に座り、窓の外を眺めた。
青空が辺り一面に広がって、遮るものは何一つしてない。
この景色が私の中の当たり前で、これ以外の景色をたくさん見たいかと思えばそうでも無い。
「また物思いにふけっているんですか、マイラ様」
そう私ーーマイラ・レイステッド以外の男の声が小さなこの部屋の中に響いた。
その声を無視して私は椅子から立ち上がり窓を開けて、外の空気をめいいっぱい肺に送り込んだ。
窓から下を見渡せば遥か遠い所に茨が地面を伝い、この場所ーー私の住処のこの塔を人々から遠ざけている。
「これだけ空が青いとね、どうしても見上げたくもなるのよ」
「窓から顔を出しすぎないで下さいね。落ちたりしたら大変ですから」
「塔から出た瞬間に私死ぬの?それとも地面に触れた瞬間?」
その質問には答えは返ってこなくて、私は声の主であるその男ーーイスターに向き直った。
彼は私に呪いをかけた張本人の魔法使いにも関わらず、こうやってずっとここでイスターと2人で仲良く生活している。
真っ黒なローブに身を包み、部屋の隅にある小さな机の上にティーカップを並べて紅茶をいれていた。