眠らぬ姫に不正解な祝福を。
ふわっと漂うアールグレイの優しい香りに、私は一つ目を閉じた。
昔からずっとこの香りは変わらずに、私を抱きしめてくれる。
……ここに来た時から、7年前からずっと。
「また追い返しの魔法でも使ったの?」
「なんの事ですか」
「まったく、とぼけないでくれる?」
「さあ、紅茶が温かいうちにお茶会でもしましょうか」
ここに来た時からこの演技も変わってない。
バレてるってことは分かりきってるけど、変える気はどうやらなさそうだ。
そっとイスターの元へと近寄ると、塔の外で低い男性の叫びが上がった。
「マイラ様」
外から聞こえるその声をかき消すようにイスターがそう言いながら、窓の方へと振り返ろうとした私の手をそっと取った。