眠らぬ姫に不正解な祝福を。
あっと声を上げる余裕すら与えずに、イスターは私の目の前に立っていた。
そのまま私の手を取り、イスターの腕の中に閉じ込められる。
少しだけ揺れるその瞳は、私を捉えたかと思えばその瞳の輝きを私に見せつけてくる。
綺麗なその瞳に吸い込まれるように、私もイスターの目を捉えて離さなかった。
ゆっくりと近づいてくるその整った顔に、私は息を飲む。
わずかに冷たいイスターの手のひらが、私の頬に触れては私から体温を奪っていく。
イスターと彼の名前を呼ぼうとしたけれど、イスターは私の口を塞ぎ噛み付くようなキスを何度も何度もしては私の息を乱し、甘い甘い蜜を絡ませた。
食べた林檎の甘酸っぱさが再び感覚を痺れさせていく。
「……俺はただあなたが欲しかった」
呼吸を整えさせる余裕すら与えないかと言うように、イスターは私を捉えては離さない。
手に持っていたタルトはいつの間にか床に落ちて、私はイスターの首に手を回して彼の蜜を味わった。
これが不正解でもいい。
呪いでもなんでもいい。
私はここに来た時からあなたに、あなたの魔法に落ちたのだから。
知らぬ間に、あなたのことが好きで好きでたまらない。
そっと離れていくイスターの温もりが、乱れた呼吸の中に混じっていく。