眠らぬ姫に不正解な祝福を。
チュッとわざと音を立てるようにして、イスターが頬にキスをしてぎゅっと力強く抱きしめられた。
でも抱きしめる力はどこか大切なものをそっと抱きしめるようで、どこか落ち着かない。
「俺を見つけた途端、一つ笑って見せたんです。周りには見えていない俺を、しっかりと見てお辞儀をしていった」
「もしかして、その人オバケだったりする?」
「まさか。やっぱりあなたは何一つ分かってない。不正解まみれです」
不正解まみれとは失礼な言い方だけど、果たしてどこまで不正解なのか教えてもらおうじゃない。
「その人はマイラ様、あなただったんですよ」
「……え?う、嘘よね?」
「嘘なんかついてません。これは本当です」
イスターとその時点で私は会っていたなら、顔を覚えていてもいいはずなのに。
何一つ覚えていないのは、かけられた祝福の副作用か何かなのだろうか。
「その時、俺は一瞬であなたに心を奪われたんです。でも黒魔術の未来を読む魔法で、あなたの誕生祭で魔女達の呪いをかけられる運命を既に知っていました」
「……」
「でも、俺の身隠しの魔法は通じない。……そう、マイラ様は元々魔法が通用しない加護があったんです」
「魔法が通用しない?」
「そう、魔法を全て跳ね返す力があなたにはあったんです。だから俺はあの日、マイラ様に魔法をかけに行ったあの日。俺は何もしていません」
大人達がかけた祝福という呪いも、全部その時点で私は跳ね返していて、イスターも何も、していない……?
でもあの時確かに、魔法がかかってゆっくりと眠りに落ちてあなたに受け止めてもらって……それで、気がついたらここにいて。
12歳の誕生日から20歳になるまでの間、呪いがかかっている状態で外に出たら私は死んでしまう呪いがある、とそう言われてきた。