強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛旦那様になりました。(番外編)
上司の他に、もう1人別の人が部屋に入ってきた。その人を見た瞬間、千春は「え、なんで………。」と、言葉を洩らし、そして目を見開いてしまった。
「千春、大丈夫なのか?」
「………秋文、どうしてここに……。」
そこに居たのは、千春の最愛の旦那様だった。彼は、とても心配した顔で、千春の傍に寄り膝をついて体を低くして、千春の顔をまじまじと見つめていた。
「私が連絡したんだよ。一人で帰すのは心配だったからね。」
「……そう、なんですね。」
彼にはこんな姿を見られたくなかった。
けれども、上司は自分を心配してくれたから、こうやって千春の夫である彼を呼んでくれたのだろう。だからこそ、何も言えなかったけれど、少しだけ納得もいかなかった。
……自分一人でも帰れたのに、と思ってしまったのだ。
感謝をしなきゃいけない場面なのに、こんな醜い感情が出てしまう自分が、千春は悲しかった。
「連絡ありがとうございました。そして、ご迷惑お掛けしてしまって申し訳ないです。それと、妻の体調が心配なので、明日お休みさせたいのですが。」
「あ、秋文!私は大丈夫だよっ!」
千春は焦って彼にそう反論するけれど、秋文は真剣な顔で、千春を見つめて首を横に振った。
「大丈夫じゃないだろう。倒れて迷惑を掛けたんだから、病院に行ってちゃんと診てもらうんだ。」
「………病院ならさっき行ったんだよ。」
「一色さん、明日はゆっくり休んでくださいね。」
上司にもそう言われてしまっては、千春が言えることは何もなかった。
彼の言う通り、休んで体力を回復させるしかないのだ。
「…………はい。ご迷惑お掛けしてすみません。」
千春がよろよろと立ち上がろうとすると、「そのままでいい。少し休んだらそのまま退勤していからな。」と、上司は優しく言うと、部屋から出ていった。