強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛旦那様になりました。(番外編)
「おまえの職場に、結婚相手が俺だとバラした事だ。……俺もお前が倒れて動揺してたんだろうな。少し考えれば、お前の仕事の都合とかあるんだってわかるはずなのに。変装するなんて、考えもしなかったんだ。……千春の顔を一刻も早く見て安心したかったんだ。」
「秋文、秋文は謝ることなんて、何もないよ。」
「でも、おまえは、バラされるのがイヤだったんだろう?」
「それは……。」
秋文の気持ちが伝わってきて、千春は胸がズキンッと痛んだ。
彼はこうやって、いつも自分の事を1番に考えてくれる。それなのに、自分は……。千春は、泣きそうになったけれど、グッと堪えた。
彼には伝えなきゃいけない。
自分の気持ちの、自分の考えを。千春は、そう思った。
「……秋文。確かにね、他の社員に伝えることで会社に迷惑かけるかな、とか、変な依頼とかも増えちゃうかなとかは思った。けど、それは言い訳なの。」
「言い訳?」
「うん。私が………他の社員が秋文の事を好きになっちゃわないかとか。まだ、秋文のファンの女の人に嫉妬しちゃうことがあるんだ。………秋文は、仕事として見てるだけだろうし、ファンは大切なんだっていうのもわかってるんだけど、モヤモヤしちゃって。秋文に当たっちゃったの……。」
千春が、おどおどした態度で彼に説明をすると、始めはポカンとした表情だった秋文も、少しずつ呆れ顔になって「おまえなー……。」と何か反論がある様子だった。
「……秋文がわざわざ心配してくれて急いで来てくれたのは嬉しかったんだよ。それなのに、自分の勝手な感情であんな事を言ってごめんなさい。」
千春が目を伏せながらそういうと、すぐ近くで秋文のため息が聞こえた。
やはり今回は彼も呆れ、そして怒っているのだろう。そう思った。
けれど、次に感じたのは怒った声ではなかった。
痛くない程度に、ほっぺたを摘まむ彼の指の感触だった。