強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛旦那様になりました。(番外編)
「あいつ、大丈夫なのか?」
「うん……心配だよね。」
「あいつは、千春より男の趣味悪いからなー。」
「秋文、千春が凹んでるぞ。」
「……もう言われなれてきたけど……。」
千春は、秋文に反抗もせずに立夏の事を考えていた。
立夏は、男らしくて少し遊びなれている人が好きだった。「真面目な人はつまらない。少し刺激がある方が恋愛はおもしろい。」と言っていたけれど、立夏の恋愛は長く続くことはほとんどなかったのだ。
けれども、立夏は美人であったし明るい性格からすぐに次の相手が出来ていた。
「出も苦労するな。……今年も告白するのか?」
「………そうだな。今年は、そのつもりだ。」
「今年はって………まさか。」
「今年で最後にしようかと思ってる。」
出は、「予定より長くなってしまったけどな。」と、苦しそうに笑った。
出は、中学生の頃から立夏が好きだった。
初めて誕生日に、告白してから毎年同じ日に立夏に告白していた。
そして、毎年立夏の答えは同じ「ごめんなさい。」だった。
その間、出も彼女を作ったことはあったけれど、いつも長続きしないのか、それとも立夏の誕生日に告白するつもりだからなのか、1年ももたずに別れていた。
それぐらいに、一途に立夏を思っているのだ。
千春は1度だけ出に「立夏のどんなところが好きなの?」と聞いてみた事があった。すると、「素直で可愛いところ、かな。」と、照れた表情を浮かべた。それが、とても初々しくキラキラとした少年のような微笑みだったのを、千春は覚えていた。
それなのに、出は今年でその告白を止めようとしている。
とても長い期間の片想い。どうして今、やめようと思ったのだろうか。
「そろそろ俺も諦めなきゃだめだろうなと思って。秋文と千春もこうやって新しい道に進んだんだし。……こういう幸せな家庭に憧れるの、普通だろ?」
「……出………。」
「おまえが決めたことだ。まぁ、最後は頑張れよ。」
「あぁ……。でも、今まで通りにする予定だよ。」
しんみりとした雰囲気になり、千春は涙が出そうになる。
誰が悪いわけでもない。
誰かを好きになって、そして告白して、フラれる。よくある話だし、千春だって何度も経験したことだった。
だけれど、千春は出の恋はこれで終わってはダメな気がしてならなかった。
これは女の勘だし、出や立夏にとっては迷惑な事なのかもしれない。
けれど、最後なら少しぐらい足掻いてみてもいいのではないか。そんな風に千春は思った。