強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛旦那様になりました。(番外編)
「あの………困ります。……インタビューはお答え出来ないので、ごめんなさい。」
「一色選手は立派に会見をなさったのに、奥様は逃げるのですか?」
「気持ちだけでもお伝えください。」
秋文の引退の話しを聞きたいのだろうか?
けれど、先程の質問はそうではないように感じた。記者達も、厳しい表情を見ているだけで、自分にいい感情を抱いてはいないのだとわかってしまった。
その瞬間、千春は怖い、という感情をやっと感じる事が出来たのだ。
「わ、わたしは………。」
千春が震えた声しか出てこなかった。頭もぐらぐらするし、顔は赤くなり汗も滝のように出てきてしまう。
なんて、答えればいいのか。
秋文の迷惑になるような言葉は、どんなものだろう。
そう思うと、次の言葉が出てこなかった。
フラッと体が倒れそうになった時だった。
「何をなさっているのですか!?」
千春の背後から女性の声が聞こえた。振り向くと、いつも笑顔で出迎えてくれる、マンションコンセルジュの女性だった。
驚きながらも毅然とした態度で、カツカツとヒールの音を鳴らしながら千春に近づいてきた。
彼女は、千春が秋文と結婚する前の恋人同士だった頃からいる女性で、千春にとっては身近な存在だったため、彼女を見た瞬間、少しだけホッとしてしまった。
「取材だからと言って何でもしていいわけではないと思います。この女性は嫌がっているので、出直してください。でないと警察を呼びますよ。」
強い口調で言い捨て、取材陣を睨み付ける。
人々が呆気にとられているすきに、彼女は千春の腕を掴んでマンションのエントランスの中に入った。