強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛旦那様になりました。(番外編)
自分の感情がどんどん高まっていく。千春が気づいた時には、先程まで彼を抱きしめていた手が、彼の顔にむけられていた。
そして、秋文の頬をつかんで引っ張っていた。
「なんで、そんな事言うの?!」
「ちぃ、へぁるぅ?」
「秋文は悪いことしてないのに、責任とる必要なんてないじゃない!?」
「………いはぁい……。」
「それで辞めちゃったら認めた事になるんだよ!?せっかく秋文を応援してくれた人も、そう思っちゃうんだよ。私は嫌だよ………。」
「………。」
千春は、ゆっくりと手を離してから、彼の胸に顔を埋めた。
「……昔ね、秋文の海外移籍を無理矢理押し付けたのかなって悩んだ時もあったけど、今はよかったと思ってるの。今、とても楽しそうにサッカーしている秋文がいる。きっと、いろんな事を経験したからだよね。」
「……そうだな。」
「憧れてた日本代表でリーダーになるなんて、すごいことなんだよね。だから、やりきってよ。こんなことで諦めて辞めたりしないで。」
千春は涙を隠すように彼の胸に強く抱きついた。けれど、秋文が体を離して、千春の顔を覗きこんできた。そして、泣いているのがわかると、苦笑しながらも指で涙を拭ってくれる。
「千春………。」
「秋文のバカ……簡単には大好きなサッカーのこと諦めないでよ。」
「おまえ、またメディアの奴らが追いかけまわすかもしれないんだぞ?それに、マンションの人達にも迷惑かかるかもしれない……。」
「私はいいの!それに少しぐらい迷惑かけてよ。私は秋文の奥さんなんだよ?家族なんだからそれぐらいは迷惑でもないよ。マンションに迷惑かかったら、警察を呼ぶわ。」
「…………くくくっ。」
「えっと、秋文??」
千春が怒った勢いで言葉を吐き続けていると、何故か怒られているはずの秋文が、面白そうに笑い始めたのだ。
千春は何故彼が笑い始めたのかわからずに、また彼の頬をつまんだ。
「なんで怒ってるのに笑うの!?」
「ぁかぁはぁーー……。いへゃい……。」
かろうじて、「いたい。」と言っているのがわかったので、千春は渋々手を話した。
彼は頬を手で擦りながらも、まだニヤニヤしている。