偽りの甘い罠
店内はすでに常連のお客さんで賑わっていた

私達は空いてるカウンター席に座ると、オヤジさん
お薦めの赤ホッピーをオーダーした

黒と白とは違って、プレミアムな味わいだとか。

「じゃあ、乾杯」

ジョッキを傾けて、渇いた喉に流し込む

「おいしい。確かにプレミアムってつくだけあって、
すごくリッチなコクとホップの爽やかな香りが口全体
にブワーッと広がる」

「ははっ。お客さん、お手本みたいな感想だね」

オヤジさんが嬉しそうにハニかんだ

確かに、そう言って屈託のない笑顔を放つ

世の女子はこういうギャップが好きなんだろう
キリッと真面目な時と綻んだ時の顔

焼鳥を頬張る姿も、牛スジ煮込みをハフハフして
食べる姿も、喉を鳴らして飲む姿、そんなひとつ
ひとつに目がいく

< 17 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop