偽りの甘い罠
その直後、雅人さんの声色が確実に変わった

電話越しだから表情は伺えないけど、憤慨してるのは
そのトーンで分かる

温厚で物腰柔かな雅人さんはどこへ?

「俺がこんなに心配して、紗英のこと大切に思って
るのに、どうして紗英は分からないんだ!!」

こんなの、私が愛した雅人さんじゃない。

包み込むような寛大さも、優しい眼差しも、
柔かな口調も、全部偽善だったっていうの?

私は誰を愛したの?

「、、、雅人さん?」
「どうせ、あの男には会ってるんだろ?
もう抱かれたのか?俺より良かったっていうのか!!
答えろよ!紗英!」
「ちがっ、、、私達はそんなんじゃ、、」
「何が違うんだよ!付き合ってるって言ってただろ!
二人で俺をコケにしてたのか!紗英、俺は絶対に
お前を離さない。どこまでも追いかけてやる」

乱暴に切られた電話

突き付けられた現実を、弱り果てた私が受け止める
には、重すぎて並大抵ではない

時を忘れて、私はその場に茫然と立ち尽くした





< 36 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop