偽りの甘い罠
天敵相手に隙を見せるなんて、、、一生の不覚

弱味につけ込むようなやつじゃないけどさ。

ハラハラと私の意識とは逆に流れ落ちる涙を、青柳の
温かい人さし指が掬い上げた

鬼の目にも涙だな。と、
ふざけたことを言いながらも、その行動と眼差しは
優しくて、知らぬ間に私は狼狽していた


「いくらでも聞いてやる。だから、全部吐き出せ」
「弱ってるときに優しくするなんて、、、」
「ばか、俺はいつだって優しいだろ。」
「そうだね、、、」
「今日は反発しないのか?」
「たまには、甘えようかと思って。その優しさに」

フッと頷くと、長丁場を覚悟したのか、上着を脱いで
ワイシャツの袖をひと捲りした。


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