偽りの甘い罠
俯いて膝上で拳を並べていた。

ずっと出なかったそれはポタンポタンと拳を濡らしていく

次の瞬間、歪んだ視界が突然ぐらりと揺れた

ふわっと懐かしい何かに包まれる

「あ、青柳?」

私を抱きしめた青柳の力が次第に強くなっていった

「もう、一人で抱え込むな。
もっと、俺を頼ってくれよ、、、そんなに嫌いか?」

抱きしめてる青柳の手がかすかに震えていた

迷惑をかけたくないなんてのは独り善がりだった

それがこんなにも、誰かを傷付けて心配させて、
悲しませていたなんて、、、

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