偽りの甘い罠
いつものように駅まで見送る

またね。そう言って帰路に着くはずだった

だけど、、、


「紗英」

聞き覚えのある声

身の毛もよだつこの声

過去が走馬灯のようにフラッシュバックした

声のした方に青柳と同時に視線を移す

存在を確認した途端にガタガタと震え出す身体

どうして?
どうしてわかったの?
ここにいることがどうして?

青柳が、大丈夫だ、とギュッと肩を抱き寄せてくれた

「良かった。紗英、迎えに来たんだ。一緒に帰ろう」

一歩ずつ近付く距離

青柳のことなんて、目にもくれずに一直線に私だけを
とらえてくる

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