流星の彼女に愛の花束を
ジリリリリリ
「はっ!」
大きな音でめがさめると、そこは布団の中だった。
隣では朔がすやすやと眠っている。
「っ。」
涼、と言いかけて私は口をつぐんだ。意識では朔だってわかっているのに、癖とは恐ろしいものだ。
まだ外は濃いピンク色で、時計を見ると朝の5時半だった。目覚まし時計のスイッチを止めて、朔を揺さぶる。
「おーい、朝だよー。起きてー。」
うーん。朔は鬱陶しそうに寝返りを打った後、少し目を開けた。
「宙?」
「うん。」
「今何時?」
「えっと…」
目覚ましを見る。本当はまだ5時35分。
でも、目覚めの悪い朔にちょっといたずらしちゃおう。私の中に、いたずら心がムクムクと顔を出す。
「えっと、8時。」
そう言った途端、朔がガバッと跳ね起きた。
無言で黙々と支度を始めて、パジャマを脱ぎ始める。
じー、と見ていると朔が言った。
「普通漫画とかだと、こう言う時は恥ずかしがるもんなんですよ。」
「え!」
私は驚いて首をかしげる。毎朝涼の着替え見てたから、そんな事ちっとも思わなかった。
「そうなんだ。」
私が感心しながら言うと、朔はYシャツのボタンを止めながらはい、と言って、それから少し笑った。
「宙は少し変わっていますね。」
朔の言葉に、私はテヘヘと笑う。やったあ、朝一で朔の笑顔ゲット!
私が呑気にそんな事を思っているうちに、
「宙、今何時?」
朔が焦った感じで聞いてくる。
「あー、えっと、」
私は目覚まし時計を見て、出来るだけ急いで答えた。
「5時45分!」
「え?」
「あっ!」
朔の不思議そうな声と、私のしまった、という声が重なった。
「あ、えと、」
ギクシャクする私の目を、朔はじっと見つめながら言う。
「8時じゃなかったんですか?」
私は言葉に詰まって、朔の足元を見る。語尾の強さからいって、多分朔は怒っている。いつもみたいに謝ればいいのかもしれないけど、今は謝る気分じゃないし、遅刻するわけでもないんだから笑ってスルーしてくれてもいいと思った。
「だって。」
そう言って朔の目を見る。何で自分がこんなに怒られてるのかわからなくて、
「何でそんなに怒るの。」
と聞いてみる。
「怒ってません。」
朔が答える。あーもうやだ。それ1番面倒なやつ。
怒ってるなら理由を言ってくれればいいのに。
まあ何言われたって今の私は謝らないけどね。
ふんだ、朔なんか知らない。どっか行っちゃえ。
ぐるぐるぐるぐる
いろんな悪い考えが私の頭を回って、自分でもこんなの嫌になる。自分が嫌いになりそうなのに、悪い考えは消えてくれなくて、私は言ってしまった。
「っ朔嫌い。」
朔は表情を変えない。朔は私に嫌われようが好かれようがどうでもいいんだ。所詮私は昨日すがりついてきた惨めな女の子。そんなもんなのかな。
出てけって言われたら、もう出てくしかないのかな。
あれこれ考えて涙が溢れる。
辛い、もういいや、やっぱりダメ元で謝っちゃおう。
「やっぱり嫌いじゃないです。ごめんなさい。」
私はベッドの上に座り込んだまま、深々と頭を下げた。
…少し沈黙が続いた後、くくく、と朔の笑う声が聞こえた。
え?と顔を上げると、おかしそうに手を口にあてて笑いをこらえている朔がいる。
こらえられてないけどね。不思議そうな顔で朔を見ていると、朔が私を見て言った。
「宙は単純だね。ごめんね、ちょっと焦ってたんだ。」
ずるい、と思った。こんな笑顔で言われたら、私はそっぽを向くこともできずに、ただ頷くしかない。
「うん。」
強くうなづいた私の頰に流れる涙を、朔の手が拭った。
「朔の手、冷たい!」
私がそう言うと、朔は私の手をとった。
意味がわからなくて、私は朔を見つめる。
朔は私を見つめ返して、そして笑いながら言った。
「本当だ、宙の手は温かいですね。」
時計はまだ6時を指していた。
「先にリビングに行っていますよ。」
私の手を離した朔は、そう言って寝室を後にした。
「はっ!」
大きな音でめがさめると、そこは布団の中だった。
隣では朔がすやすやと眠っている。
「っ。」
涼、と言いかけて私は口をつぐんだ。意識では朔だってわかっているのに、癖とは恐ろしいものだ。
まだ外は濃いピンク色で、時計を見ると朝の5時半だった。目覚まし時計のスイッチを止めて、朔を揺さぶる。
「おーい、朝だよー。起きてー。」
うーん。朔は鬱陶しそうに寝返りを打った後、少し目を開けた。
「宙?」
「うん。」
「今何時?」
「えっと…」
目覚ましを見る。本当はまだ5時35分。
でも、目覚めの悪い朔にちょっといたずらしちゃおう。私の中に、いたずら心がムクムクと顔を出す。
「えっと、8時。」
そう言った途端、朔がガバッと跳ね起きた。
無言で黙々と支度を始めて、パジャマを脱ぎ始める。
じー、と見ていると朔が言った。
「普通漫画とかだと、こう言う時は恥ずかしがるもんなんですよ。」
「え!」
私は驚いて首をかしげる。毎朝涼の着替え見てたから、そんな事ちっとも思わなかった。
「そうなんだ。」
私が感心しながら言うと、朔はYシャツのボタンを止めながらはい、と言って、それから少し笑った。
「宙は少し変わっていますね。」
朔の言葉に、私はテヘヘと笑う。やったあ、朝一で朔の笑顔ゲット!
私が呑気にそんな事を思っているうちに、
「宙、今何時?」
朔が焦った感じで聞いてくる。
「あー、えっと、」
私は目覚まし時計を見て、出来るだけ急いで答えた。
「5時45分!」
「え?」
「あっ!」
朔の不思議そうな声と、私のしまった、という声が重なった。
「あ、えと、」
ギクシャクする私の目を、朔はじっと見つめながら言う。
「8時じゃなかったんですか?」
私は言葉に詰まって、朔の足元を見る。語尾の強さからいって、多分朔は怒っている。いつもみたいに謝ればいいのかもしれないけど、今は謝る気分じゃないし、遅刻するわけでもないんだから笑ってスルーしてくれてもいいと思った。
「だって。」
そう言って朔の目を見る。何で自分がこんなに怒られてるのかわからなくて、
「何でそんなに怒るの。」
と聞いてみる。
「怒ってません。」
朔が答える。あーもうやだ。それ1番面倒なやつ。
怒ってるなら理由を言ってくれればいいのに。
まあ何言われたって今の私は謝らないけどね。
ふんだ、朔なんか知らない。どっか行っちゃえ。
ぐるぐるぐるぐる
いろんな悪い考えが私の頭を回って、自分でもこんなの嫌になる。自分が嫌いになりそうなのに、悪い考えは消えてくれなくて、私は言ってしまった。
「っ朔嫌い。」
朔は表情を変えない。朔は私に嫌われようが好かれようがどうでもいいんだ。所詮私は昨日すがりついてきた惨めな女の子。そんなもんなのかな。
出てけって言われたら、もう出てくしかないのかな。
あれこれ考えて涙が溢れる。
辛い、もういいや、やっぱりダメ元で謝っちゃおう。
「やっぱり嫌いじゃないです。ごめんなさい。」
私はベッドの上に座り込んだまま、深々と頭を下げた。
…少し沈黙が続いた後、くくく、と朔の笑う声が聞こえた。
え?と顔を上げると、おかしそうに手を口にあてて笑いをこらえている朔がいる。
こらえられてないけどね。不思議そうな顔で朔を見ていると、朔が私を見て言った。
「宙は単純だね。ごめんね、ちょっと焦ってたんだ。」
ずるい、と思った。こんな笑顔で言われたら、私はそっぽを向くこともできずに、ただ頷くしかない。
「うん。」
強くうなづいた私の頰に流れる涙を、朔の手が拭った。
「朔の手、冷たい!」
私がそう言うと、朔は私の手をとった。
意味がわからなくて、私は朔を見つめる。
朔は私を見つめ返して、そして笑いながら言った。
「本当だ、宙の手は温かいですね。」
時計はまだ6時を指していた。
「先にリビングに行っていますよ。」
私の手を離した朔は、そう言って寝室を後にした。