叶わなくてもいいから、恋したい。
「西牧、帰ろ。」

「うん。」

私は佐川のことを翔輝とは呼べていなかった。

あの一回きりでそれからは全く呼んでない。

今日こそ呼びたいな。

「……翔輝。」

「ん?」

「け、結構恥ずかしいね。」

「……………!おいおい、それ言うなよ。恥ずかしくなる。」

「そ、そうだね!ごめん………」

「…………りか。」

「……え?」

驚いて、思わず目が見開いた。

佐川は私を見て、ニコって笑った。

「その顔いいな!」

「び、ビックリするじゃん。」

今、名前で呼ばれたよね。

「ありがと。」

「どういたしまして。」
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