叶わなくてもいいから、恋したい。
「ただいま!」

「おかえり、りか!」

お母さんが涙ぐんで迎えてくれた。

お父さんなんてバリバリ泣いている。

「お父さん、お母さん。感動しているところすみません。大事な話があります。」

「えぇ。いいわよ。」

「入りたまえ。」

お父さんが客間へ案内した。

お母さんはお茶を入れている。

「お気遣いなさらず。」

「これぐらいさせて。私たちからのささやかなプレゼントだと思って。」

「はい。」

沈黙が続く。

客間に広がるローズヒップティーの匂い。

いつもは落ち着くお母さんの匂い。

でも、今日は緊張感を和らげるものだった。
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