叶わなくてもいいから、恋したい。
「昨日はありがとう。」

「ん。」

「温かかったよ!」

「そうか。」

周りの女子はその会話を聞いているようだった。

「ねえ、西牧さんって多賀谷くんと付き合ってるの?」

「「え?」」

「それとも、前に学校に来たあのイケメンと?」

「どっち?」

清汰と?ないない。

だからって、佐川もないから。

「清汰とはただの幼なじみだよ。」

「昨日、抱きしめあってたんじゃないの?」

「え?違うよ。ただ……モゴッ!」

清汰に口を押さえられた。

「ただ、俺の家で飯を食っただけ。」

「ほんと?」

「ああ。」

女子達は口々に言った。

「なーんだ。そんだけか。」
「進展したかと思ったのに。」
「ファイト!」

なんかよく分かんない状況になった。

え。どうしよ。

清汰はぐいっと私の手を引っ張り、女子の輪から出してくれた。

「今のうちに。」

「なんで嘘ついたの?」

「パーカー貸したなんて言ったら女子騒ぎだすだろ。」

清汰は幼なじみの私が言うのもあれだけど案外モテるからそれなりの苦労と配慮があるのかも。

「確かに。モテ男は苦労するね!」

「一番好かれたい人に好かれないなら無駄だし。」

「ん?」

「お前にはハードル高いって言ってんの。」

「うん?」
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