叶わなくてもいいから、恋したい。
家を出ると、もうすぐ真っ暗になるところだった。

「暗いね~」

「まあ、仕方ないな。気づかなかった俺が悪いし。」

「あ、そういう訳じゃないよ。楽しかったし。」

「それならいいけど。」

マフラーを巻いていても寒い!

北風がアスファルトに強く打ち付けた。

心まで冷える!!

「寒い?」

「そりゃね。」

佐川は近くにあった自動販売機で何かを買った。

「ん。」

コーンポタージュを渡してきた。

「え……いいよ!そんな。」

「我慢はよくないぞ。寒いなら言え。」

「ありがと。」

いつもより甘くまろやかなような気がした。

「美味しい。」

「よかった!」

その満面の笑みは暗き夜を照らす星よりも綺麗で見とれるものだった。

ドキドキドキドキ。

早くなる鼓動と高鳴る気持ちを必死で押さえた。

「ここだから。送ってくれてありがとう。」

「おう。」

「じゃあね。」

「じゃあ。」

佐川が物言いたげだったか家に入ろうとした。

「お前んちでも勉強会しような!!」

遠くの方だったけど、はっきり聞こえた。

その声は私に何かをくれているように思えた。
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