敵国騎士と命懸けの恋

「起こしてしまいましたか、ごめんなさい」


「……」


「私は七海(ななみ)と申します。あなたは?」


横になり、天井を見つめる。
待っても返事はなかった。

もしかしたら口を開くことも辛いのかもしれない。


「…大丈夫ですか。辛いですか?人を呼びますか?」


「……」


「今、呼びますね!」


「大丈夫だから、俺に構うな」


良かった。
聞こえた声に、安堵する。


「どこか悪いのですか?」


「ただ休んでいるだけだ」


「そうなんですね。…ここは王宮の病室ですか」


「ああ」


「私は煌紫(こうし)王国出身で、河で溺れて…気付いたらこの病室で、煌王国の王の目前にいました」


溺死しなかったことは奇跡だけど、敵国に流れ着いてしまったなんて。神様は随分と意地悪だな。

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