敵国騎士と命懸けの恋
窓から暖かい日差しが射し込む。
ああ、なんていい天気だろう。
「体調はいかがかな」
「大分良くなりました」
王家専属のお医者様。
先日、河に落ちて1週間ほど意識のなかった私を介抱してくれたという命の恩人だ。
「まだ万全ではないのだから、しっかり休みなさい」
目覚めてから2日目。
気分の悪さからは解放されたが、まだ全身の痛みは残っている。
そりゃそうだよ、あんな高い崖の上から落ちたのだから。
テキパキと仕事をするお医者様を横目に、浮かぶ考えは全てネガティブなことだ。
健康な身体に戻ったら、私はどうなるのだろう。
すぐに殺されることを望まないのであれば、別の選択肢を受け入れるべきなのだろうけど。
無理!絶対に無理だよ!
好きでもない人と、身体を重ねることも一緒になることも、私にはできない。
「第一、それが出来てたら!私は!婚期を逃したりしてないですからね!」
思わず漏れてしまった声に、お医者様が振り返る。慌てて首を振り、笑って誤魔化した。
不思議な顔をしてお医者様は、いつもカーテンで仕切られた男のベッドに移動した。
「颯真、体調はいかがかな」
ソウマーー彼の名前は颯真というらしい。