敵国騎士と命懸けの恋
お医者様は颯真の包帯を取り替えて病室を後にした。
「やっぱり怪我していたのですね」
彼の方を向いて話し掛けるが、答えはない。
再度、口を開こうとした瞬間、また扉が開いた。
お医者様が忘れ物でもしたのだろうかと身体ごと向き直った瞬間、息を呑んだ。
そこに立っていた飛護(ひご)国王は、相変わらず綺麗な顔で私を見下ろしている。
「様子を見に来てやったぞ」
耳馴染みの良い声。
触り心地の良さそうな銀髪に、国王の証である白の衣装を纏い、金縁の黒いマントを身につけていた。その腰にある長剣が緊迫感を生み出す。
「私の妻になる気はあるか?」
「何番目の妻は知らないけれど、お断りします」
昨日は口を開くと頭がずきずきと痛んだけれど、今日は随分とマシになった。
怯んだら負けだと、国王の青い目をじっと見つめる。
こちらの答えに気を悪くした様子もなく、国王はベッドに近付き、そして、私に覆い被さってきた。
前言撤回!絶対に、怒っていらっしゃる!
「近いです!退いてください!」
「どれ、味見と行こうかな」
手足を動かして全力で抵抗しているつもりなのに、思ったよりも力が入らず、長身で鍛えぬかれた身体をもつ男に敵うはずはなかった。