敵国騎士と命懸けの恋

大きな手が、衣服の中に侵入した。

その口元には笑みを称え、何が面白いのか私に理解できる日は永遠にこないだろう。


「お願いします、止めてください!」


泣き喚けば相手の思う壺だと、冷静に言葉を投げ付ける。


「小ぶりだが、私の手に馴染むいい胸だ」


「ッ、…」


もぞもぞと服の中で動く手に、羞恥よりも世の中の理不尽さに腹が立つ。

権力を持っているから弱き者を好きにしていいのだろうか。敵国の姫だから、仕方ないと受け入れるべきなのだろうか。


そんなの、おかしい。


銀髪が私の頰に触れ、顔が迫る。


「素直に受け入れるのであれば、優しくするよ」


その言葉通りの優しい声には、騙されない。
男はそうやって、私の後ろにある"王家"のためにたくさんの嘘を重ねる。


誰も私自身のことなど、見てないくせに。


「止めて!」


さらに距離が詰まり、今にも唇と唇が触れそうな瞬間ーー


大きな音がした。



ドンッと、壁を叩く音。



国王の目が、唯一カーテンで仕切られたベッドを捉えた。


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