別れても好きなひと
その証拠に大悟は私があまり動かなくていいように私の動きを先回りして私のワゴンをセットしたり、ワゴンに必要なものをさりげなく置いていく。ドライヤーなんてコンセントの抜き差しまでやってくれた。

私の動きを読むところはさすがと思いながら、徐々に嬉しくなってくる。にやけるのを我慢しながら手を止めなかった。

「ありがとうございました。」
最後のお客様を見送る頃には足が痛すぎて脂汗が滲んでいた。痛みを我慢しすぎて頭まで痛い。

私はその場でとりあえずヒールの靴を脱いで座り込んだ。

「杉崎さん!?」まわりのスタッフもそれには驚いていた。
「ちょっと休憩。足が痛くて。片付けお願いしていい?」
歩く気力がなくてはってスタッフルームにいこうかと考えていると「手、かしますよ」と後輩の高橋君が声をかけてくれた。
「ありがと」私が高橋くんの手を取ろうとすると
「高橋は片付けして。」という声と一緒に私の体がふわっと宙に浮いた。
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