別れても好きなひと
「店舗移動のこと。ごめんなさい。」

私の言葉に「ん?」と大悟があまりにも優しく相づちをうつから私はまた涙が込み上げた。

「自分でもどうしたらいいかわからない…。」
「うん。」
「大悟のことはすごく大切。今の店舗のみんなも大好き。でも…」
「もう言わなくていい。」

きっと大悟には私の言いたいことなんてお見通しなんだろうな…。

「俺はなにも言わずに決めた莉子がどれだけの想いだったか分かるつもりだ。その上で相談してほしかったっと思った。ひとりで抱えて、自分のこと追いつめて、まったく。」
大悟は私をふわりと抱き締める。

「こんなちっさい体で受け止めきれない分まで自分で背負う莉子を放っておけないんだよ。俺は。莉子にとって俺はどんな存在なんだよ。離れた方がいいってことか?」

そばにいたい。
好き。
大好き。
一緒にいたいよ。
離れたくないよ。

言いたい言葉をすべて飲み込んで私はただ大悟を強く抱き締めた。
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