別れても好きなひと
こんな顔をさせたい訳じゃない。

「莉子、うまくまとまらなくても、わがままなことでも、なんでもいいから話して欲しい。」
「……。」
「無理?」
大悟の言葉に私は決意を固めて大悟を見た。

急に緊張して手が冷たくなる。両手を合わせて震えを止めようとすると大悟が私の両手を包み込んでくれた。

「聞いたの。デザイナーさんから誘われてるって。」
「うん。」
「ちゃんと言って欲しかった。」
「ごめん。」
「断るつもりで私と暮らそうって言ったの?」
「断るつもりっていうのはあってるけど、だから莉子と暮らすとか莉子とやり直したいから断るっていうのは違う。」
大悟は私をまっすぐに見つめる。嘘がないことを大悟は目で私に伝えてくる。
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