別れても好きなひと
「昔、卵の使い方で喧嘩したよね。」
「あったな。莉子がオムライス用にとっておいた卵で俺が卵かけご飯しちゃってさ。」
「今考えても…くだらないね。」
「本当に。俺たちの喧嘩っていつもそうだよな。」
「うん。基本的にくだらない。」
「喧嘩って言っても長続きしなかったしな。」
「うん。でもね。くだらなくても喧嘩ができるって幸せだったんだなって思った。私のお父さんお母さんを見て。」
私の肩にあごをのせ大悟は真剣に話を聞いてくれている。
「お母さんの幸せもお父さんの幸せも私にはわからないな。」
「ん?」
「お母さんもお父さんも幸せだったかな…。」
大悟は少し考えてから
「わかんない。でも、幸せな時間はみんな平等にあると思うよ。お父さんにもお母さんにも幸せな時間がたくさんあったはずだ。」
「……そうだといいな。」
「きっとそうだよ。」
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