オネエが野獣になるときは。


「え?」


社長の言葉にどこか感じる違和感。


「やっぱ指切ってる。消毒するから俺の部屋に来て」


…今、俺って言った?


「どうかした?」

「いや、あの…社長今、言葉遣いが…」


私の言葉に一瞬不思議そうな顔をするも、いきなりハッとした彼。


「いや、違うのよ…!?えっと…」


社長ってもしかして…


「もしかして、家ではリラックスして男口調が出ちゃうんですか?」

「え?」


きっとそうだ!

私は女口調の社長しかしらないけど、元は男の人だもんね。

リラックスしてついつい昔の口調に戻っちゃうことがあるのかも。


「あー、そうそう!そうなのよ!家ではたまーに出ちゃうの、男の部分っ」

「もう、いきなり口調が変わるからビックリしましたよ!そういうことなら先に教えてください」

「ふふ、ごめんね」


なんて、このとき呑気に笑っていた私は社長の言葉なんて微塵にも疑っていなかった。

…まさかあんなことになるとも知らず。
< 16 / 29 >

この作品をシェア

pagetop