オネエが野獣になるときは。


ガチャリ



「社長、鍵はどうしたんですかっ!?」

「…支倉ちゃんただいまぁ」

「あ、おかえりなさい。じゃなくって…酒くっさ!」


いつもよりやたら帰ってくるのが遅いと思えば…

いつもは女向けの甘い香水の匂いを振りまいてる社長に、お酒とタバコの匂いが染み付いてるっ!?


「ふふ、お酒いっぱい飲んじゃったわぁ」

「ちょっ、重…っ」


かなりの量を飲んだんだろう。

社長は足元をふらつかせながら私にもたれかかる。

この人がこんな風になってるのって…一緒に住んで初めて見たかも。


「もう…社長の部屋まで肩貸しますからちゃんと歩いてください!」

「えー?私の部屋は嫌よー!今日は支倉ちゃんの部屋に寝るのぉ」

「はぁ!?なに言ってるんですかダメですよ!」

「嫌ったら嫌ぁ!」


いつもは完璧でスマートな社長が、駄々をこねる子供みたいになってる…!

不覚にも可愛いとか思っちゃったわけだけど、オネエとはいえこの人はいい歳した男の人なんだし。



「ほら、早く部屋まで…」



―――トスッ




「聞き分けが悪いわね、支倉ちゃん」
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