オネエが野獣になるときは。
***
「支倉ちゃんただいま」
「おかえりなさい社長」
時計の針が10を差す頃、ようやく帰ってきた社長の姿。
「今日はやけに遅かったですね」
まさかまた飲んでるんじゃないかと思ったけど、見た感じ酔ってはなさそう。
「ちょっといろいろ相談されちゃってね…」
「あ、もしかして例のお悩み相談会ってやつですか?」
「あら。支倉ちゃんの耳にも入ってたのね」
さぞかし疲れたんだろう
髪の毛をかきあげてネクタイを緩めると、無意識に社長はため息を漏らす。
それ、私以外の前でやったらフェロモンで男も女も倒れちゃいますよ?
「私を頼ってくれるのはありがたいわ。だけど少し数が多すぎるわね」
そう言ってるけど、ふふっと笑う社長はきっとなんだかんだ楽しんでるんだろうな。
「その相談会、なんか評判いいらしいですね」
「そうなのかしら?でも全力で答えるようにはしてるわよ。あ、せっかくだし支倉ちゃんの悩みも聞いてあげましょうか」
ストンと私の隣のソファに座る彼。
「え、私のですか?」
「ほら、なんでもいいから言ってみなさいよ」