ナツマツリ
「圭さん。」
「ん?」
「結婚…おめでとうございます。」
まいったなあ、なんて腕を後ろに照れる表情を浮かべたその姿は本当に幸せそうで。
「ありがとう、ナツちゃん。」
「いえ…。式に出席できなくてすみませんでした。」
微笑む彼の顔を見ていたら自分でも驚く程すんなりとした言葉が出てきた。
そこで、確信する。
先刻母親から告げられたときもそうだったけれど…。圭さんが結婚することであたしの中に卑屈な感情は何ひとつ生まれていない。
初恋だと、思っていたんだけれど。もしかしたら初めから憧れの類のものだったのかもしれないな、と思わず苦笑しそうになる。
「気持ちだけで嬉しいよ。」
ほら。圭さんの穏やかで幸せそうな表情を見るだけで、あたしまで幸せな気持ちになれるんだから。