ナツマツリ


今までのあたしの中だと、きっと一番短い筈。


緊張に早鐘を打ち付ける胸を服の上から押さえながら、そろりと玄関に滑り込んだ。


「おかえり。」

「…ん。」


玄関に現れた彼に、軽く声を返した。


侑の反応が気になって、肩に掛けてあるショルダータイプの鞄をぎゅ、と握り締める。


「どう、かな…。」


どぎまぎするあたしに、ぱちり、と。目を瞬かせた彼は。


「死ぬほど可愛い。」

「……え、」

「ほら、行くぞ。」

「ちょ、待って…!靴!」


慌ててヒールを脱ぎ捨て、指を絡めて歩く侑に付いて行く。


良く晴れた日の午後。


単純なあたしは、侑に褒めて貰えるのならずっとこの髪型でもいいかも、なんて。そう思ったりした。



-END-

( a hairstyle )


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