ナツマツリ
そういえば、とそこで圭さんは言葉の続きを紡ぎ出した。
「昨日、侑《ゆう》が帰って来たみたいだ。」
――佐々木侑。
あたしと同い年で、毎年ここの町内で祭に参加している男。中学校までは同じだったけれど高校は別のところへ通ったため、現在の彼について知ることはなかった。
圭さんは侑の家の向かいに住んでいるから、どうやら二人は昔から仲が良いらしい。
「そうなんですか。」
へえ、と言った感じの返答。そんなあたしに思わず苦笑いをこぼした圭さんはさらに続ける。
「そう、って。ナツちゃんあっさりしてるね。」
「…まあ。」
煮え切らない反応をする彼に首を捻る。取り立てて言うほどのことでもないと思うのだけれど。
「(あいつ報われないな…、)」
そんなことを思う圭さんの胸中に、あたしは気づく筈もなかった。