ナツマツリ
鼻腔を掠めるその匂いに顔を上げると、申し訳なさそうな表情を浮かべたナツが口を開いた。
「ごめん、邪魔した。」
「全然。」
「…ほんと?」
「ん。寧ろ待ってた。」
眼鏡と書物を傍らに置き、彼女の隣に腰掛ける。
「うまそー。」
前々から思っていたが、ナツは料理が得意な部類に入るらしい。
そういえば、と。疑問を感じた俺は躊躇うことなくそれを言葉にした。
「ナツ。」
「ん?」
「俺の誕生日前さ、ケーキ作り練習してたって言ってたじゃん。」
「?、うん。」
「なんでナツ料理できんのに、一週間も練習?」
「あー…、それか。」